京都南座でG2脚本の『有頂天家族』を観劇してきた。
『有頂天家族』は森見登美彦原作の小説でアニメ化もされている作品。京都が舞台のファンタジー設定で、私は小説もアニメも大好きだ。そして今回は脚本がG2。私はG2の作る舞台が大好きで、彼の脚本・演出なら間違いないだろう…と思っていた。
そして『有頂天家族』は小説の中に南座が登場する。小説の中に登場する劇場で、舞台化された作品を観られるとは、なんて粋な設定。これはヲタクとして観なければなりません…って話。
今回『有頂天家族』は奇跡の大ラッキーで前から5列目という良席だった。なんかこぅ…今年貯めた「徳ポイント」を一気に使い切った気したけれど、2024年最後の観劇を良席で観られるのは光栄なことだ。
そして肝心の公演だけど流石はG2の脚本だった。なんと言う安心感! 原作をリスペクトした素晴らしい脚本&演出だと感心した。森見登美彦の小説は言葉遊び的な要素や言葉のリズムが特徴的だけど、その特徴的な部分は最大限に残しつつ、舞台化なりの演出を加えて、原作ファンも楽しめる内容になっていた。
役者さん達も芸達者な人揃いで素晴らしかった。熟練の俳優さんも若い俳優さんも公演していて好感が持てたのだけど、主人公の下鴨矢三郎をWキャストで演じた中村鷹之資は最悪だった。
演技自体は悪くなかったのだけど、台詞を噛み過ぎだった。1度なら目をつむるけれど、4~5回以上(あまりにも噛みまくるので、途中て回数を数えるのを辞めた)噛んでいて「オイ、コラ? ふざけてんのか?」って気持ちになてしまった。お金を払って観に来ている観客に失礼なのは当然として、一緒に舞台を作っている役者さんやスタッフの人達に対しても失礼だと思う。
一緒に観劇していた夫は「芝居観る人って、主役があんなに噛んでも大人しく観てるの偉いよね。サッカーだったらブーイング飛んでる」と苦笑いしていた。
まぁ…しかし舞台芸術は一期一会。良い回もあれば悪い回もある。ハズレを引いてしまったのは仕方がないと諦めるとして。私以外の人はどんな感想を持ったのかな…とツイッター(現X)を検索してみたところ、誰も文句を言っていないことに驚愕した。「中村鷹之資さん素敵でした」みたいな感想ばかり。
……なんなの? もしかしたら歌舞伎の世界(中村鷹之資は本来は歌舞伎役者)って、ファンが文句言ったら消される世界なの? それとも最近の舞台が役者の不出来だったとしても優しく見守っていきましょう……みたいな暗黙のルールでもあるの?
主役が台詞を噛みまくる舞台が絶賛されるのは歪な世界だと思う。
過度なバッシングは避けるべきだし、個人攻撃はしちゃだめだろうけど、それとこれとは話が違うように思うのだけどなぁ。最近は「褒めて伸ばす」とか「叱らない」が流行っているけど、舞台の世界にも浸透しつつあるのだろうか?
なんだかモヤモヤした気持ちになってしまった。
だけど私はここに書き残しておく。G2脚本の『有頂天家族』は素晴らしい舞台だったけれど、11月17日公演の中村鷹之資は酷過ぎた。お金を返せとは言わないまでも、舞台に立つならもっと真摯に取り組んで戴きたいと強く願う。