ある日、娘が唐突に「私の家事能力って低過ぎる気がする…」と言ってきた。「家事能力が低いって、なんか女子っぽくない気がする」と娘。
確かに…娘の家事能力は一般的な女子中学生からすると低い気がする。
洗濯機のセットとか洗濯物の回収して畳んだりは出来るし食器を洗ったり片付けたりは出来るけれど、食事に関すること…例えば「1人で味噌汁作る」とか「簡単な夕食作る」みたいな調理作業は1人で出来ない。
「自分が中学生だった頃を思い出して親から教わった事をやらせれぱ良いんじゃないの?」って話だけど、私が娘の年齢の時はすでに一家の主婦だったので大抵の家事は問題なくやれていた。今の言葉で言うとヤングケアラー状態だったので「一般的な中学生の出来ること」がよく分かっていない。
「子どもにも家事をやらせるべき」だとは思うものの、今の娘に家事をする余力はないし、ちょっと前の娘にも家事をする余力なんてなかった。
小学生の頃、私達家族の生活は体操一筋ですべての事は体操の予定に合わせて回っていたし、今は馬渕教室(塾)の予定に合わせて回っている。娘は常に自分のやりたい事(やるべき事)でイッパイイッパイなのだ。
「だけど小学校の低学年の頃とか、中学入りたての頃は時間の余裕あったと思うんだど…」と娘が言うので私は答えた。
「お母さんは基本的に、あなたが自分からやりたいって言うことをやらせてきた。料理については幼稚園の頃はパンを焼いたりお菓子作ったり、自分でお弁当の玉子焼いたりしてたでしょ? あれは、あなたが自分からやりたがったから、やらせていた。だけど小学生以降は料理に興味が無くなっちゃったのよね」
娘は小さい頃は体力がありあまる体育会系で「止まったら死ぬ」みたいなタイプだった。小学生以降は身体を動かす遊びを好んでいて家でチマチマお菓子を作ったり料理をしたりする子どもではなかったのだ。
「私が自分からやりたいって言うことをやらせていた…って言うけど、私が自分からやりたがった事って…体操と勉強しか無かったんじゃないの?」と娘。そして娘は自分の言葉に「そっか。だから、こんな風に育ったのか…」と絶望していた。
絶望する娘に「家を出て1人で暮らすようになれば、どうにでもなるから大丈夫。従姉妹のMちゃんも1人っ子で大事に育てられたタイプだったけど、1人暮らしをはじめたら料理もちゃんと出来るようになってるから」とリアルな例を出して慰めておいた。
娘にとって年の離れた従姉妹のMちゃんはものすごく優秀な女性で国立大学を卒業後は国家公務員となり現在は海外に勤務している。なおMちゃんは料理が出来るようになったのは本当だけど、片付けが出来ないタイプだと義姉が嘆いていた。
結局のところ「何もかも完璧にやれる人」なんて、どこにもいないのだ。
私は中学生の頃、娘とは較べものにならないほどの家事スキルを身に着けていたけれど、その分勉強はできなかった。
『鋼の錬金術師』に出てくる「等価交換の法則」ではないけれど「何かが秀でている分、何かで出来ない」のは当たり前のことだし、恥じるような話じゃない。
娘は家を出て1人暮らしをするようになったら他の子より苦労するかも知れないけれど、今はインターネッツがあるじゃないか。困りごとがあったらグーグル先生が道を示してくれるはずだと信じている。
とりあえず家事能力とか、女子っぽさとか眠いたことを言ってないで、母としては目の前にぶら下がっている高校受験に集中して戴きたいと強く思う。
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