『感光生活』は15作からなる短編集。
作者の小池昌代は私にとって初挑戦の作家さんだ。
詩人で翻訳家とのこと。小池昌代がこの短編集を書いた当初は小説を書くようになってまだ日が浅かったようだが「流石は詩人」と思わせてくれるだけの面白さがあった。
感光生活
「その日も、呼び鈴は、いつにもまして、権力的に鳴った。その瞬間、わたしは神経を逆なでされ、理由もなく押したひとに反感を抱いた」(「隣人鍋」)。
日常と非日常との、現実と虚構との、わたしとあなたとの間の一筋の裂け目に、ある時はていねいに、ある時は深くえぐるような視線をそそぐ15の短篇。
アマゾンより引用
感想
大人の女性に読んでもらいたいなぁ…と思う作品だった。
方向性は少し違うけれど、稲葉真弓なんかと少し似ているように思う。
エキセントリック過ぎず、かといってほどほどに色気もある。それでいて、少し地味な感じに惹かれてしまった。
安定した大人の女の人の書いた文章だなぁ……という印象。
「感性」という意味では、かなりギラギラしているのだけど、わざわざ作り上げた感が無く、自然な感じがするのだ。
それにしても、非常に上手い題名だと思う。
収録作品のイメージとピッタリ合致するのだ。感情とか、日常の一コマを的確に写し取っているような文章が多く見られた。
残念な部分があるとすれば、地味な作品ばかりなので「ガツン」と心に残るものが無いことだろう。
十二分に面白かったし、良い作品集だと思うものの、しばらく時間を置いたら内容を忘れてしまいそうな気がする。「空気みたいな」と表現したくなるような、そんな感じ。
……とは言うものの、ちょっと面白い感性の作家さんだと感じたので、今後も機会があれば読んでいきたいと思う。