小池昌代作品5冊目。今回も短編集。やっぱり、この人はいい。私の肌にしっくり馴染む人だ。
なんと言ったらいいのだろうなぁ。「もう若くない。私はオバチャンだ」と自覚していて、それなのに、心の奥底に乙女な部分を持っている人に読んで欲しいような作品ばかりだ。
主人公達はものすごく、おばちゃん臭くてウダウダしているのだけど、びっくりするほど「乙女」な心を持っている。
そこがいい。なんとも可愛らしい。
そして私は思う。世の中にはヒッソリと「乙女な心」を持っているオバチャンが沢山いるんじゃないかと。
ことば汁
モノクロームの日常から、あやしく甘い翔溺の森へ。恋多き詩人に三十年以上仕えてきた女、孤独なカーテン職人が依頼をうけた屋敷の不気味なパーティー、魅入られた者たちがケモノになる瞬間…短篇の名手が誘う六つの幻想譚。
アマゾンより引用
感想
どの作品も良かったけれど『花火』が特に気に入った。
老いた両親と文具店をしながら細々と暮らすバツイチの女が両親を連れて花火を見に行く話。
主人公の短かった結婚生活がチラホラ挿入されつつ、主人公と両親の驚くほど地味な日常が入り乱れている感じがとても良かった。
小説の主人公って、とかく「すごい」人が多いけれど、こういう地味な人がいてもいいと思う。
『つの』『すずめ』『りぼん』『野うさぎ』といった不思議系の話も良かった。
小池昌代の描く恋は、良きにつけ悪しきにつけ突き抜けていて気持ちがいい。そして狂気が静かに流れているところがとても良い。
娘が昼寝している横で読んでいたのだけれど、独特の世界にどっぷりハマらせてもらった。私はクスリ(覚せい剤とか大麻とか)の経験はないのだけれど、クスリで酔うのは、こんな感覚かなぁ……なんてことを朧げに思った。
私はかなり面白いと思ったし、気に入ったけれど好き嫌いは別れるかも知れない。
男性が読むとどうなのだろうなぁ。ちょっと男性の意見も聞いてみたいところだ。
しばし現実を忘れてしまうくらいに本に没頭させてもらう…という、良い読書が出来た1冊だった。